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2018.08.02
タワーマンション地震の影響
眺望がよく、グレードの高いタワーマンションはますます大人気ですが、いざ住むとなると気になるのが「地震」などの自然災害です。タワーマンションは最新の建築基準で建てられ、広告には「免震」「耐震」「制振」などの言葉が躍ります。もし、首都直下型の巨大地震が起きたら?もし南海トラフ地震が起きて東京湾臨海部に津波が来たら?果たして、自然災害が起きた時にタワーマンションは安全なのでしょうか?
建築基準法によって、高さ60m以上のタワーマンションを建てる際には、一般的なマンションにはないさまざまな基準をクリアすることが求められています。まず、高さ60mを超えるタワーマンションには、高い構造強度が求められます。コンピューターシュミレーションを行って、予想される地震で建物がどのように揺れるのか検証し、構造上、安全であると認められ、国土交通大臣の認定を受けてからでなければ建築に着手することはできません。
特に、高層マンションで心配されるのは長周期地震動だといわれています。長周期地震動とは、大きくゆっくり揺れる地震のことです。高さのある建物には固有周期というものがあります。建物が左右に揺れ、もとの場所に戻る時間が決まっているのです。地震の揺れと建物の揺れが一致すると、建物の揺れが非常に大きくなります。そこで、2016年、国土交通省は南海トラフ地震の長周期地震動対策についてまとめ、地方公共団体などにあて通知を出しました。そこで、南海トラフ地震の影響を受けると予想される地域内では、新築の高層マンションを建築する際により強化し、既存の建物も補強などを行っています。
タワーマンションの構造に関して地震対策は3つの方法がおもに用いられています。「耐震構造」「制振構造」「免震構造」です。素人からはどれも同じように思えますが、1つ1つ意味が違います。まず「耐震構造」とは、建物を支える支柱や梁などを頑丈にして、揺れに強い構造にする建築法です。耐震構造は、1981年以降に申請を受けて建てられたすべての建物で採用されています。震度6~7程度の大地震が起きても建物は倒壊を免れます。阪神・淡路大震災のとき、耐震構造で建てられた建物は倒壊することはありませんでした。ですが、壁や柱に大きなヒビが入ったり、設備配管が破損したりと、建物は大きなダメージを受けました。大地震で建物が倒壊するというケースは避けられたものの、揺れが大きかったため屋内で家具の下敷きになって死亡したり、建物や設備の補修に時間と多額の費用がかかるなどの問題点が明らかになりました。
1980年代から、耐震構造に変わる新しい構造システムが導入され始めました。それが「免震構造」です。免震構造は、建物に地震の揺れを伝えない構造です。建物と地面の間に積層ゴムと鋼板でできた免震装置を置いて、地震の振動を吸収し、建物に揺れを伝えないと言う工夫がなされています。地面と建物の間に免震装置があるため、地震の際には地面と建物が切り離されます。地面の揺れを建物に伝えないようになっています。地震の揺れがまったくなくなるわけではありませんが、免震構造では地震の揺れが1/3くらいにまで抑えられます。家具や家電製品が倒れたり、壁や柱にひびが入ると言ったダメージを最小限に抑えられると考えられています。免震構造のマンションの場合、地震保険が最大半額になるケースもあります。免震構造の場合は、建築費用が若干高めになりますが、実際に大地震が起きても、建物の修復は一般的なマンションと比べると安く済むので、トータルで考えるとお得だといえるかもしれません。免震構造に適しているのは、鉄筋コンクリートのマンションなど重さがあり、硬い建物です。逆に比較的軽い、鉄骨のマンションなどには不向きです。定期的に点検をすることが必要です。
「制振構造」は、建物の骨組みの箇所に、地震の揺れを吸収するばねやゴムなどの構造を組み込んで、揺れや衝撃を和らげる構造のことです。制振構造を取り入れると、地震による揺れが緩和されて安全性が高まるだけでなく、壁の損傷を防いだり、背の高い家具が倒れるといったダメージも少なくて済みます。タワーマンションに向いている構造です。
高層のタワーマンションの場合は、避難が必要になった時が心配だという人もいます。エレベーターが止まってしまったら、1階のエントランスまで行くのに相当時間がかかってしまいます。ですから、タワーマンションの屋上にはヘリコプターで救助するためのスペースが設けられています。空から見ると、屋上に「H」と書いてあるマンションは、ヘリポートがあり、ヘリコプターが着陸できるマンションです。「R」と書いてあるマンションもありますが、これはレスキューの意味。ヘリコプターが着陸はできませんが、マンションの上空でホバリングしながら救助活動を行います。
過去に日本で発生した震度6以上の地震では、ほとんどの場合、大規模火災が発生しました。専門家たちも、首都直下型地震や南海トラフ地震が起きた場合、津波よりも火災が怖いと口をそろえて言います。ですから、タワーマンションの場合は、防火設備が非常に大切です。原則として11階以上の建物には、消防法によってスプリンクラーの設置が義務付けられています。11階以上になると、消防のはしご車が届かないからです。床面積が一定の広さになると、屋内消火栓の設置も義務付けられます。自動火災報知設備も必要です。熱に強いコンクリートを使って施工されていますし、各部屋のカーテンやじゅうたんに燃えにくいものを使用するようにも義務付けられています。火災が起こったとしても広がらないように、一定の範囲で火災と煙をせき止める防火区画も設けられています。ですから、タワーマンションの場合は、マンション全体に火災が広がるということは、ほとんどないといってもいいでしょう。防災というと地震対策に意識がいきがちですが、地震が起きれば火災も起きるということを忘れず、個人個人でも避難経路を確認したり、消火設備を確認するなどの準備が必要です。
日本は地震大国で、そのため防災に関する意識は諸外国と比べてかなり高いといえます。大地震が起きるたびに構造基準が見直され、地震・津波対策は年々進歩しています。今回取り上げた3つの建物構造ですが、それぞれにメリット、デメリットがあります。ですから、建築する際には、免震構造と耐震構造を組み合わせたり、制振構造と免震構造を組み合わせたりと、それぞれの良い部分を複合したオリジナルの工法を用いている新築タワーマンションもあります。どの構造方法がよいのかというのは、一概には言えません。マンションが建つ土地の形状、地盤、建物のデザインなどによって変わってくるからです。
マンション選びには、眺望や施設や設備の充実、間取りなどが重要です。毎日の生活に便利な立地、駅からの距離なども必要です。お子さんがいる方は周囲の環境なども考慮するでしょう。おしゃれな方はデザイン性も重視します。でも、すべての人に共通して言えるのは『安全性』です。安全なマンションを選ぶことは、自分と家族の生命を救うことになるのです。普段は意識していなくても、自然災害は思いがけない時にやってきます。自分が住みたいマンションは、本当に安全なのだろうかと考えてみてください。
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